むし歯が進行して歯を大きく削って修復する必要がある場合、詰め物では強度が足りないため部分的な被せ物や、歯全体を被せる必要があります。
治療の際に「銀歯」か「セラミック」の選択肢を迫られて、すぐに決めることは困難ではないでしょうか?そこで、セラミックと銀歯の違いを解説します。
セラミックとは
セラミックは陶器のことを言います。むし歯が進行して大きく削った際に、人工的に補う素材の一つです。歯科用で使用されるセラミックは、強度が強く審美性に優れています。
セラミックの種類
セラミックは歯科医院によって種類が異なりますが、ここでは代表的な種類を紹介します。
オールセラミック
全てセラミックのみを使用した素材です。白く透明感があり、審美性に優れています。天然の歯と同じ色を出すことができます。
ハイブリッドセラミック
セラミックとプラスチックが混合している素材です。オールセラミックやジルコニアと比べると強度が落ちますが、費用が抑えられます。
ジルコニア
人工ダイヤモンドと呼ばれており、強度が非常に強い素材です。審美性はオールセラミックよりもやや劣りますが、奥歯にも使える素材です。
e-max
ガラスセラミックと呼ばれる新しい素材です。強度が強いにもかかわらず、摩耗性がある素材です。そのため噛み合わせに対する歯を痛めることがありません。
セラミックと銀歯の違い
セラミックと銀歯は色の違いだけではありません。以下の5つの違いがあります。
見た目
セラミックは天然の歯と色が馴染みやすく、目立たないのが特徴です。セラミックの素材によって透明度が高いものも製作できるので、審美性に優れています。
一方銀歯は口の中に入ると、非常に目立つため審美性はありません。
生体親和性
銀歯に含まれているパラジウムは、金属アレルギーを引き起こす可能性があります。口の中に金属が入ると、金属イオンが溶け出します。金属イオンは体内に蓄積する性質を持っており、今までアレルギーを起こしたことがなくても、急にアレルギーの症状が発生する可能性があります。
セラミックは生体親和性に非常に優れており、アレルギーの心配はありません。
むし歯のリスク
セラミックは表面がツルツルしているので、歯垢がつきにくい特徴を持っています。銀歯は表面に傷がつきやすく、歯垢が溜まりやすいため、むし歯や歯周病といったリスクが高くなります。
またセラミックは歯を削った型にぴったり合うように製作ができますが、銀歯は素材の性質上ぴったり合うように作れません。そのため接着剤で隙間を埋めます。接着剤は月日が経つと劣化し、歯と銀歯の間に隙間ができ、その隙間に汚れが入り込んでむし歯になる可能性があります。
費用
銀歯は保険が適用されるため費用を抑えることができます。一方セラミックは自費診療のため費用は高くなります。
またセラミックの種類によって金額が異なります。
軽さ
金属でできている銀歯は重く、歯に負担がかかります。セラミックは軽い素材なので、歯に負担をかけず修復が可能です。
部位ごとのおすすめ
セラミックを選択する際は、部位によって最適な素材が異なります。
前歯
見た目が重視される前歯はオールセラミックがおすすめです。オールセラミックは天然の歯と同じような色と透明感のある歯の再現ができます。また劣化もせず歯肉との境目が美しく仕上がります。
保険治療の場合は「硬質レジン前装冠」で白い歯になりますが、表面はプラスチックによって色を再現します。そのため透明感がなく、長期間使用すると劣化するといったデメリットがあります。
また前から4・5番目の歯は保険が適用されるCAD/CAM冠で修復ができます。セラミックよりも強度が劣りますが、保険が適用されるためほとんどの方がCAD/CAM冠を選択します。
奥歯
奥歯は強度が高いジルコニアか、e-maxがおすすめです。奥歯はほかの歯よりも噛む力が強くなります。そのため奥歯の素材の強度が重要になります。
ただしジルコニアのように硬さがある素材は、かみ合う歯がすり減ってしまう可能性があります。そのためジルコニアはかみ合わせの調整が重要になります。セラミックをご希望される方は、経験を積んだ歯科医師のもとで治療を受けることをおすすめします。
噛み合わせに合わせて選択する
セラミックは費用が高ければ良いものではなく、噛み合わせに合わせて種類の選択をすることが大切です。そのためセラミック治療は歯科医師の十分な知識と技術が必要とされます。
まとめ
セラミックと銀歯は審美性の違いだけではありません。セラミックはむし歯になりにくい特徴を持っていますが、噛み合わせの力が強いと割れてしまうリスクがあります。そのため、歯ぎしりや食いしばりなどしている方や、かみ合わせが強い方にはあえて銀歯をすすめることがあります。
セラミックと銀歯で迷われている方は、歯科医師とよく相談し、納得したうえで選択をしましょう。