2022.02.25更新

歯の審美性は前歯の見た目で大きく左右されます。そのため、前歯だけ部分的に矯正したいという人は数多くいらっしゃいます。前歯だけ矯正することを「プチ矯正(部分矯正)」と言います。
歯の矯正は、一般的には、矯正装置(ブラケット)とワイヤーを歯に装着して、歯並びや噛み合わせを整えるのが一般的です。その他、マウスピース矯正などもあります。
しかし、前歯矯正で歯を削ることもあり、これを「ストリッピング」や「IPR」と言います。「虫歯治療でもないのにそこまでするの?」と思われるかもしれませんが、前歯矯正ではよくあることです。
それでは、前歯矯正で歯を削る必要性やメリット・デメリット、リスクなどについて解説します。

 

前歯矯正で歯を削る必要性・メリット

前歯矯正で歯を削る必要性やメリットには主に以下の4つのことが考えられます。

・歯を動かすスペースを確保するため
・歯の大きさを調整するため
・ブラックトライアングルの改善のため
・歯列の安定性を図るため

以下、順に解説していきます。

 

歯を動かすスペースを確保するため

デコボコの歯並びを改善させるためには、歯が動かせる隙間が必要です。歯と歯の間をほんのわずか削ることで、歯を並べるスペースを確保することが可能になります。

 

歯の大きさを調整するため

歯の大きさは人それぞれ違います。特に上下の歯のバランスを整えるために前歯矯正でストリッピングすることがあります。
ストリッピングして、歯の大きさを調整することは、審美性を高めるとともに、上下の歯の噛み合わせを考える上でも必要な場合があります。

 

ブラックトライアングルの改善のため

トリッピングをブラックトライアングルの改善のために行うケースもあります。ブラックトライアングルとは、歯肉が痩せてきて、歯と歯ぐきとの間に三角形の黒い隙間ができてしまう現象のことです。
ストリッピングにより、歯と隣の歯の隣接面の面積を増やすことで、ブラックトライアングルを小さくすることが可能になります。

 

歯列の安定性を図るため

ストリッピングにより、歯と隣の歯の接触面を増やすことにより、歯列が安定する効果もあります。これは、お互いの歯の支え合う面積が増えることによる効果です。

 

歯を削る方法

歯を削ると聞くと、皆さんどうしても「痛みはないのか?」ということを心配されると思います。しかし、ご安心してください。

前歯矯正で歯を削る(ストリッピング)箇所は、エナメル質の表層部分だけです。虫歯の治療のように歯髄(歯の神経)のある象牙質の内側近くまでは削りませんので、痛みはありません。ですからストリッピングでは、麻酔も使用しません。

削った後は、表面を綺麗に研磨して、フッ素を塗布し歯質を強化します。
ストリッピングには、使う道具によって3種類の方法があります。やすり、バー、ディスクの3種類です。以下、それぞれ簡単に説明します。

 

やすり

歯と歯の間を削るときに使います。手動とエンジンをつけて使う方法とがあり、担当歯科医が使いやすいほうを使うようです。やすりの太さによって削る量が変わってくるので、正確に削る量を計算して、やすりの太さを調整します。

 

バー

エンジンに虫歯で削るときよりも細いバーをつけて使用します。バーの太さによって削る量が変わるので、削る量に合わせてバーの太さを調整して使います。早く削る場合に適しています。

 

ディスク

丸いディスクを歯の間で回転させて削ります。ディスクはそれなりの大きさがあるため、保護カバーで安全に他の歯に当らないように使用します。

 

歯を削るリスクやデメリット

歯を削るリスクやデメリットとして心配されることは以下の2点でしょう。

・虫歯や歯周病になりやすくなるのではないか
・歯がしみることが多くなるのではないか

しかし、さまざまな論文では、一定の範囲内であればエナメル質を削っても虫歯や歯周病などのリスクが増加しないと言われています。

また、日本の前歯矯正の際のストリッピング治療では、歯の片側0.25mm、歯一本に対して0.5mmまでが安全と言われています。もちろん人によってエナメル質の厚さに個人差がありますが、それでもストリッピングのリスクをより軽減するならば、なるべく薄く削るストリッピング治療が好ましいでしょう。

 

まとめ

歯を削るというと痛みを心配されると思いますが、ご紹介したように前歯矯正の際に歯を削る場合には、痛みを感じる歯髄まで削ることはなく、エナメル質の表層部分だけしか削りませんので、痛みを心配する必要はありません。
また、前歯矯正では必ずしも前歯を削るわけではなく、削るデメリットよりもメリットが大きいと判断した場合にストリッピングをご提案しますのでご安心ください。
心配であれば、担当歯科医にストリッピングのメリットやデメリットをよく説明してもらった上で納得して治療することをおすすめします。

投稿者: 西本歯科医院

2022.02.10更新

「以前、費用をかけてセラミック治療を行ったのに、セラミックを入れた歯の根元が黒ずんでしまい気になる」と相談に来る患者様がいらっしゃいます。自然で美しい白い歯にするためにセラミック治療を選択したのにもかかわらず、歯の根元が黒ずんでしまっては本末転倒です。なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか。
セラミックを入れた歯の根元が黒ずんでしまう原因や治し方について解説します。

 

セラミック治療とは

セラミック治療とは、審美性の高い歯を手に入れるために行う治療です。審美性に優れたセラミックを被せ物(クラウン)や詰め物(インレー)に使用することにより、天然歯と同じ色合いのきれいな歯並びにすることが可能となります。

 

セラミックを入れた歯の根元が黒ずむ原因

セラミックなどの被せ物をした場合に、歯の根元(歯と歯ぐきの間)が黒ずんで黒いラインができてしまうことがあります。この黒いラインを「ブラックマージン」と呼びます。

ブラックマージンには、いくつかの原因が考えられます。大きく分けると、セラミックを被せた歯自体が変色してしまう場合と、金属の使用が原因である場合があります。

ここでは、セラミックを入れた歯の根元が黒ずむ原因について考察していきましょう。

 

原因その1「セラミックを被せた歯自体が変色してしまう場合」

セラミック治療する際に、セラミックを被せる歯の神経(歯髄)を取り除くケースがあります。歯の神経(歯髄)を取り除くことは、セラミックを被せる上で絶対に必要だというわけではありません。

しかし、著しい虫歯などやむを得ない事情で歯髄を除去したケースでは、セラミックを被せた後に、被せ物をした歯自体が、時間の経過によって茶褐色に変色してしまうことがあります。

さらに歯肉が痩せてしまいセラミックを被せた歯の変色が見えてしまうことが原因の1つとして考えられます。

 

原因その2「金属の使用が原因である場合」

セラミックを被せる際に、神経のない歯の補強として金属(メタルコア)を使用することがあります。被せ物の内側に金属を使用している場合に、この金属が露出、腐食、さびが生じるなどしてブラックマージンの原因になることがあります。

その他にも、金属フレームにセラミックを焼き付けたメタルボンドの光の透過性が失われ、歯の根元が暗く見えるケースや、土台部分に使用された金属成分が経年変化でイオン化して歯ぐきに溶け出し、歯肉を黒くしてしまうケースなどもあるでしょう。

 

セラミックを入れた歯の根元の黒ずみの治し方

ブラックマージンの治療の方法は、ブラックマージンの原因によって異なります。ここでは、原因別のブラックマージンの治療方法について解説します。

 

セラミックを被せた歯自体が変色してしまう場合の治療法

セラミックを被せた歯自体が変色してしまっている場合には、その上から金属をまったく使用していないオールセラミッククラウンを被せたとしても、歯肉から歯根の変色が透過してしまうため、根本の解決にはなりません。
この場合には、変色した歯根を漂白した後、同色のファイバーコアを接着してからオールセラミッククラウンなどを装着する治療をすることで、審美性の高い自然な美しい歯にすることができます。

 

金属の使用が原因である場合の治療法

金属の使用が原因である場合には、金属を使用しない方法で治療する必要があります。このように健康保険で使用する金属(卑金属)の素材を使用しない治療を「メタルフリー治療」と呼びます。

メタルフリー治療の事例としては、以下のようなものがあります。

素材特徴
オールセラミッククラウン 審美性に優れ、変色せず汚れがつきづらい
e-maxクラウン 最先端セラミックで、透明感があり、強い強度と耐久性を持つ
ジルコニアクラウン 審美性に優れ、強度が強く、奥歯にも使用可能
セラミックインレー 審美性に優れ、変色せず汚れがつきづらい

 

セラミックを入れた歯の根元の黒ずみの治し方のポイント

最後に、ブラックマージンの治療のポイントを解説します。

 

しっかりとした原因究明と適切な治療

治療法も原因によって変わってくるので、しっかりとした原因を究明すること、原因に合わせた適切な治療をすることが大切です。

セラミックなどの人工歯をホワイトニングすることはできませんので、ブラックマージンの治療には、被せ物や詰め物の(場合によってはメタルフリーの)再治療が必要となります。

 

自然な仕上がり

ブラックマージンの治療で重要なことは、周囲の歯と同じ色にする自然な仕上がりにすることが重要です。

そのためには、再治療の際に、透明感や色合い、歯並びなどを担当歯科医とよく相談することも大切でしょう。

 

まとめ

セラミックを入れた歯の根元が黒ずんでしまった場合には、しっかりとした原因究明とそれに適合した治療が必要になります。審美歯科治療は、担当歯科医の技術によって審美性に差が出てしまいます。きちんと対応できる審美歯科を受診することをおすすめします。

投稿者: 西本歯科医院